移住労働者の生活と権利に関する省庁交渉を行いました。

(下町ユニオンニュース 2023年12月号より)   

11月13日、移住者と連帯する全国ネットワークを中心に、様々な市民団体や労働組合などが参加して、移住労働者に関する省庁交渉を行いました。交渉は13日と14日の二日間行われ、私は一日目の「技能実習制度」と「労働」をテーマとする交渉に出席しました。

 技能実習制度については、政府の有識者会議で制度の見直しが議論中です。最初は「廃止も視野に」と言っていたのですが、どんどん議論が後退し、結局は「発展的解消」だと言って、単なる看板の架け替え(中身の改善はほぼゼロ)という内容になりそうです。省庁交渉においても、技能実習生が自由に職場を変えられない転籍制限が残されるなど、奴隷労働が改善されないとの批判が強く出されました。

 また、技能実習生からの相談を受ける「技能実習機構」(国の機関)の対応の問題が指摘されました。技能実習生がささいな理由で解雇されるケースが相次ぎ、しかも技能実習機構の担当者が解雇を容認する姿勢を示すケースが起こっているのです。「解雇にお墨付きを与えるのが国のすることか」と厳しい指摘が出されました。

 労働全般に関する交渉でも、国の後ろ向きな回答が相次ぎました。例えば、就業規則を職場で働く移住労働者の母語に翻訳することの義務化について。なんと厚労省の担当者は「使用者に過大な義務を課すことになる」と回答しました。出席者からは「厚労省が企業の立場ばかり忖度してどうする。もっと労働者の視点に立つべきだ。」との声が上がりました。

 また、少なくない移住労働者が、危険なアスベスト除去業務に従事している問題について、実態調査を求めたところ、厚労省は「企業にアンケート調査をしても、違反はないと回答されるだけで意味がない」と回答しました。まったくやる気のない回答で、労働者の命と健康を守る厚労省の責任が無視されています。この酷い回答に対して、「国の安全対策の不備で、いったい何万人の労働者がアスベストの犠牲になったのかわかっているのか。労働者の命を守るために実態調査を行うべきだ。」と指摘しました。

 二日間の交渉では、この他にも入管法・難民・ヘイトスピーチ・子ども・貧困対策・医療福祉・女性など、移住労働者をめぐる様々なテーマでの交渉が行われました。        (東京労働安全衛生センター・天野)