福島第一原発事故飯舘村・東電慰謝料請求裁判控訴審始まる 

下町ユニオンニュース 2021年11月号より

■一審不当判決
福島第一原発事故の飯舘村を中心とした被災者14世帯42人が、東京電力に対して損害賠償・慰謝料請求の裁判を東京地方裁判所に提訴したのが、事故翌年である2012年3月30日でした。
 7年後の2019年3月27日、13人のみに総額2100万円の賠償を東電に命じる不当な判決が出されました。
 原告の訴えは、ふるさと・住いを奪われ、生活・暮らしを奪われ、人生設計を奪われ、家族がバラバラにされ、加害者である東京電力からは真摯な謝罪の言葉も無いことを許せない。その責任を明確にするためにも精神的損害に対する慰謝料を請求するものでした。
 しかしそれを一審判決は「東電の既払賠償額を超える精神的損害は発生していない。」と切り捨て、むしろ「空間線量は…水準を大きく下回っており」「除染土壌も…適切に管理されている」ので帰還しないほうがおかしい。移転をもって被害は終わっているのだというものでした。
 到底許容することができない判決に、原告の中で5世帯11名がただちに東京高等裁判所に控訴しました。

■第1回弁論
 控訴審から原告訴訟代理人弁護士が交代し、福島原発訴訟を闘う中川素充弁護士をはじめ計4名の弁護団となりました
 控訴審は、当初、書面でのやりとりが続きました。そして、今年の7月12日、第1回弁論が法廷で開かれました。
 冒頭に、原告代理人として中川弁護士が意見陳述書を読み上げました。

■第2回弁論
 10月18日には第2回弁論がありました。
 法廷での弁論はすぐに終了し、進行協議となり、傍聴者は退席を求められました。
 その後、40~50分にわたり、東電側は、一審原告各人にすでにこれだけの金額を支払っている、過払いの可能性もあるといったことをべらべらと話し続けたということです。
 報告会では、原告が口々に、「東電は加害責任をどう考えているのか!」「我々は財物でない精神的苦痛を訴えているのに!」「そもそも支払い済みだ、合意したと東電は言っているが、その基準を作り、支払いにあたっても細かくチェックして多くを切り捨てて、押しつけたのは東電だ!」「わたしたちが二重に金をとっているとまで言っていて、人間として許せない!」と怒りを露わにしました。
 弁護団からは、東電側の低線量被ばくの否定、過払いとの主張への批判と、ふるさと喪失の精神的苦痛や、東電の加害責任についてもあらためて主張していくとの話がありました。

 現在、全国20以上の裁判所で1万人以上もの原発事故被害者が裁判中とのことです。その先陣を切ったとも言えるこの小さいけれど大きな裁判。引き続き連帯しよう!

今後の裁判予定
第3回弁論 2022年1月24日 15時  東京高裁809法廷
第4回弁論      4月18日 15時