新型コロナ感染症からあなたと家族、仲間を守るために

下町ユニオンニュース 2020年5月号より
                    飯田勝泰(東京労働安全衛生センター) 2020/4/26
1.新たな脅威、リスクとしての新型コロナ感染症
 4月7日、安倍首相は新型コロナウイルスに対応する特措法により「緊急事態宣言」を発出しました。5月6日までの1か月間、都道府県知事を通じて外出や営業の自粛が要請されています。
 4月26日現在、国内の感染症の陽性者は1万3439人、死亡者は372人(クルーズ船除く)。東京では3908人、死亡者100人です。しかし政府がPCR検査を抑制したため、感染状況の実態が正しく反映されていません。無症状の感染者を含め、すでに感染爆発が起きているのではないかと考えられます。医療崩壊が懸念されるなか、下町・東京東部地域でも、台東区の永寿総合病をはじめ、都立墨東病院、有明癌研病院で院内感染が発生。一般診療や救急医療を中止、又は縮小に追い込まれています。
 ところが、小池都知事は、三密(密閉、密集、密接)防止と外出抑制、対象業種の営業自粛を言うばかりで、PCR検査の拡大、感染防止対策に有効な手立てを示していません。
 感染爆発と医療崩壊の危機が迫るなか、政府が緊急事態宣言を延長することも予想されます。たとえ一時的に収束したとしても、二次、三次と再燃することも考えられます。私たちは、新たな脅威、リスクとしての新型コロナ感染症に腰を据えて立ち向かわねばなりません。
2.過小評価や恐怖は禁物
 新型コロナ感染症の危険性を過小評価したり、恐怖におびえて危機感を煽るだけでは、現実的な感染症防止対策へのアプローチを難しくしてしまいます。職場では事業者、使用者の安全衛生の責任を明確にし、労使で実効性ある感染症防止対策に取組みます。
 在宅勤務・テレワーク等が推奨されていますが、全ての業種、職種に適用できません。職場環境や作業における感染リスクを徹底して洗い出し、適切な対策を実行します。
 労働安全衛生法第25条は、「労働災害の急迫した危険があるときは、直ちに作業を中止し、労働者を作業場から退避させる等必要な措置を講じなければならない。」と規定しています。また労働契約法第5条は使用者に労働者の安全への配慮を求めています。事業者に実効性ある感染防止対策を要求しましょう。
3.職場で感染症防止対策にどう取組むか
 新コロナの感染経路はインフルエンザと同様に飛沫感染と接触感染です。
 日本産業衛生学会は「新コロナウイルス情報 企業と個人に求められる対策」(2020年4月20日)を公表し、企業における感染予防に関する具体的な対応策を提言しています。厚労省も「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」を公表し、①職場での感染防止のための基本的な対策、②クラスターの発生防止のための対策、③風邪症状が出た場合等の対応、④新型コロナウイルス感染症の陽性者等が出た場合等の対応、⑤感染防止に向けた行動変容に関する項目を点検するようになっています。ぜひ活用しましょう。
4.労災といじめ、ハラスメント防止
 職場で感染者が出た場合には、感染経路が業務や通勤によるものであれば労災認定されます。安全センターに相談して労災請求に取組みましょう。 感染者、濃厚接触者に対するいじめ、ハラスメントの事例が報道されています。パワーハラスメント防止のための事業主の雇用管理上の措置が義務化され、「パワハラ防止対策指針」が策定されました。職場で新型コロナに関連するハラスメントを許さない取組みが求められます。
 職場には多数の外国人労働者、留学生、技能実習生が働いています。新型コロナ感染症に関して正確な情報が伝わらず、不安と恐怖に怯えているのではないかと危惧されます。外国人支援ネットワークKameidoは、多言語で労働相談Q&Aのリーフレットを作成しSNSやウェブサイトで発信しています。ぜひ多くの外国人に拡散させましょう。