最低賃金  公開労働講座

下町ユニオンニュース 2026年1月号より

12月11日、江東区の総合区民センターで、後藤道夫さんを講師にお招きし、下町ユニオン主催(共催・亀戸労働情報相談センター)の公開労働講座「『最低賃金1500円』がつくる仕事とくらし」を開催しました。以下、講演要旨です。

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●最低賃金の動向

最低賃金の金額すれすれで働く労働者が増えてきている。最低賃金をめぐる最近の動きとしては、最低賃金を決める地方審議会の変化、発効日の先送り、等がある。

地方最賃審議会が変化について。中央の審議会が決めた「目安額」を上回る引き上げを39道府県がしており、もはや「目安」の意味はないのではないかというほどの状況。その理由に多くの審議会が「労働力の流出」「地域間格差」をあげている。また、知事や行政当局の大幅引き上げ意見陳述や要請が多くみられた。自治体が金額引き上げに向かう一番の要因は他県との競争に負けたくない、という点ではあるが、こういうことがごく普通になってきているのは大きな変化だ。

金額の大幅引き上げの一方で、発効日の先送りが多く出てきている。これでは引き上げ額が数割減少したのと同じことであり、制度の弱体化につながりかねない。また高市政権は「2020年代のうちに1500円」を破棄し、最低賃金制度を否定しかねない発言をしている。政府答弁の「上げられるように環境を整える」というのは、最賃の趣旨を理解していない。余裕のある時に上げればよい、というものではない。

●最低生計費試算調査が示すもの

生計費の試算で、自動車など、移動にかかる費用など、地域により必要なものは異なってくるということがポイントだ。地方中都市と大都市部の必要額の差は小さい。これは、「全国一律」のかなり大きな根拠になる。月額で26~28万円、時給で1700円~1900円が必要。参考として、傷病手当は通常時の3分の2になる。この状況の一・五倍の賃金が妥当な額の目安になるのではないか。これは、最低生計費と同じくらいの額になる。

●暮らせる賃金(リビング・ウェイジ)と最低賃金

「生活できる」条件とは、①通常の生活が普通にできる賃金(生活賃金)、②病気になった時などの「特別な需要」のそれぞれを国として最低限保障。1942年の「ベヴァリッジ報告」では、労働者が窮乏に陥る三つの場合は①失業や病気など「収入の中断」、②労災や退職など「稼得力の喪失」、③結婚や生誕・死去など「特別の支出」。従来の日本の「生活ができる」とは、生活賃金を脆弱な社会保障が「支援」してきた。日本はこの生活賃金の部分が非常に弱い。

●感想

社会保障なども含めた大きな流れから、最低賃金について理解を深めることができてよかったです。ありがとうございました。()