正当な労働組合活動を刑事事件にすることは許さない
加茂生コン事件・無罪判決についての共同声明

下町ユニオンニュース 2022年3月号より

 12月13日、大阪高等裁判所が、不当労働行為に抗議する組合活動が強要未遂罪にされた加茂生コン事件で、一審判決(京都地裁)を破棄し、組合員1人を無罪にするなどの実質的な組合勝訴判決を出した。
 この事件は、加茂生コン(京都府)の常用的な日々雇用運転手が、2017年10月、関生支部(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)に加入して、正社員化や未払い賃金の支払いなどを要求して団体交渉を申し入れたところ、会社はタイムレコーダーを撤去して監視カメラを設置。運転手は労働者ではないとして団交をかたくなに拒否したうえ、組合員の子どもの保育園入所に必要な就労証明書への押印も、組合加入以前は毎年応じていたのに拒否して、会社を廃業すると通知して雇用を打ち切ったことに端を発している。 このあからさまな不当労働行為に抗議した正当な活動が強要未遂にあたるとして、組合員らが2年後に逮捕され、京都地裁が2020年12月、組合員1人に懲役1年、もう1人に懲役8ヶ月、両者とも執行猶予3年という有罪判決を出した。大阪高裁判決はこれを覆して、1人に無罪、もう1人に罰金を命じたものである。
 一審判決はまったく許しがたいものであった。日本には憲法28条労働基本権保障があり、労働組合法1条2項は正当な組合活動を刑事罰の対象としないとする刑事免責条項を明記している。それにもかかわらず、京都府警や京都地検は、「正社員として雇用することを不当に要求した」などと称して組合員らを逮捕・起訴した。このような暴挙がまかり通り、裁判所がそれを追認する信じがたい判決を出すようでは、労働基本権はないに等しい。
 全国各地で活動するわれわれユニオンは、解雇、残業代不払い、さまざまなハラスメントなどに直面した労働者の労働相談を受け付け、企業に団体交渉を申し入れ、不当労働行為に抗議し、問題解決を図ってきた。そのひとつひとつが加茂生コン事件のように刑事事件化されたならば、ユニオンの活動は成り立たなくなる。その意味で加茂生コン事件は、当事者である関生支部の団結権を侵害する弾圧事件であるだけではなく、われわれユニオンの活動の存立基盤をも揺るがしかねない事態だとわれわれはとらえて支援し活動にとりくんできた。
 組合排除の意図を隠さず確信犯的に不当労働行為を重ねた企業が免罪され、他方で、労働者の権利と雇用を守るために正当な組合活動を行った組合員が刑事犯とされる暴挙が許されていいはずはない。大阪高裁の無罪判決はあまりにも当然の司法判断である。
 われわれはこの判決をふまえて以下のとおり関係各方面に求めたい。
 第1に、大阪高検は、大阪高裁の無罪判決を真摯に受け止め、最高裁への上告を放棄すべきである。
 第2に、加茂生コン事件以外の刑事裁判が係属する近畿地方の各裁判所は、大阪高裁判決に倣って、憲法28条労働基本権保障をふまえた公正な判断を下すべきである。

以上

2021年12月24日

※この声明は、全国コミュニティ・ユニオン連合会、コミュニティ・ユニオン全国ネットワークの共同よびかけで、上告期限という時間的限りがある短期間、緊急のよびかけであったが、秋田、山形、千葉、東京、神奈川、長野、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、広島、愛媛の13都府県33団体が賛同して発しました。