定例セミナー「公務非正規で働く女性たちの現実」の報告

下町ユニオンニュース 2022年3月号より

飯田勝泰(東京労働安全衛生センター)

 国や地方自治体の職場では、非正規で働く職員や委託や指定管理などの公共民間で働く労働者が増えています。特に地方自治体では「会計年度任用職員」といわれる非正規公務員は短時間労働者を含めて全国で一一二万人、地方自治体によっては四割が非正規職の労働者となっています。いまや役所の業務、公務・公共サービスのほとんどが非正規公務労働者の存在なくして成り立ちません。しかし、その担い手である公務非正規労働者は単年度の有期雇用(任用)で、正規公務員との間に給与、福利厚生等の待遇面で大きな格差があり、女性が多くを占めている現実は知られていません。
 二月四日、東京労働安全衛生センターは、こうした公務非正規で働く女性たちの現実をテーマにとりあげたセミナーを開催しました。会場二〇名、オンライン五三名が参加し、この問題への関心の高さがうかがわれました。
 セミナーでは、昨年「公務非正規従事労働者への緊急アンケート」を実施した公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)の瀬川紀子さん(副代表)とNPO法人参画プラネットの渋谷典子さん(代表理事)をゲストに迎え、お話をうかがいました。
 瀬川さんは非正規公務員として都内、埼玉県の男女共同参画センターで事業全般の企画・実施に携わった経験があります。はむねっとの緊急アンケートの結果(有効回答数一二五二件)では、公務非正規の女性労働者の年収は、主たる生計維持者の四割以上が二百万未満であり、フルタイムでも八割が二百五十万円でした。また三割を超える人が身体面で、四割超がメンタル不調を抱えており、九割超の人が「将来への不安」を抱えた状況に置かれていることがわかりました。瀬川さんは、「公務非正規は法律的にもはざまに置かれた存在。「いのち」の格差が生じている」と訴えました。
 渋谷さんはNPO法人代表として公務委託の指定管理者を務めました。公務の民営化が「市民参加」「協働」の論理を使って進められましたが、公共サービスの担い手の労働環境が適切ではない場合、公共サービスの質が劣化し、担い手の生活も不安定に陥ると指摘し、生活賃金を保障する公契約条例が必要と提起しました。
 セミナーに参加した地方自治体の議員からは、今年三月から始まる地方議会で、「会計年度任用職員」の格差是正、待遇改善を取り上げたいとの発言もありました。
 地域コミュニティ・ユニオンにとっても、身近な自治体で働く非正規公務の人びとの労働問題に取り組むとともに、制度改善や公契約条例の制定などの課題にも取り組む必要があると思います