最低賃金ものがたり 9

下町ユニオンニュース 2025年12月号より

これまでのふりかえり

 これまで、最低賃金の目的や内容、対象者、どのように決まるのかなどについて書いてきました。連載を始めてからの一年間で最低賃金をめぐる状況は大きな変化の兆しを見せはじめています。これまでの簡単な振り返りと、ポイントの整理をしてみたいと思います。

最低賃金 とは…

最低賃金の種類

  地域別最低賃金と、特定最低賃金。

(これ以降のまとめは、地域別最賃について)

地域別指定賃金の対象者

  低賃金労働者。金額は都道府県別に決定。

目的

  労働者の生活の安定
  日本では単身労働者での想定

対象となる賃金

  賞与や住宅手当などは含まれない

金額決定にあたり考慮すべき3要素

  地域における労働者の生計費及び賃金
  並びに通常の事業の賃金支払能力

  参照 ILO131条約

  「国内の一般的賃金水準、生計費、社会保障給付及び他の社会的集団の相対的生活水準を考慮」

決定の流れ

  中央最低賃金審議会での「目安額」がABCの3ランクごとに出され、主にはこの「目安」を参照する流れで各都道府県審議会での審議と決定が行われてきた。

日本の最低賃金をめぐる論点

全国一律でない

  最低賃金が地域別に異なるのは日本だけ、他の国は全国一律での賃金額が基本。

「生計費」の妥当性

  地方と都市部とで最低賃金の金額の格差に相当するほどの生計費の開きはないにもかかわらず、考慮に入れられていない

考慮すべき3要素の妥当性

  3要素に「賃金の支払能力」が含まれていることが、最低賃金引き上げへの使用者の反対の強い背景となっている。

「目安」のランク制度について

  低い地域には低い引き上げ額が目安とされた時期が長く続いてきたことが、地域間での最低賃金格差の拡大を助長してきた。

賃金の中央値との比較

  貧困をなくす基準指標となる賃金中央値との比較ルールが、定まっていない。

ふりかえってみて、いかがでしたか。
皆様の感想など、ぜひお寄せ下さい。(前田)