労災・職業病の企業責任を問う裁判が始まりました~第一回期日で、組合員・Aさんが意見陳述を行いました~

食品香料の製造作業に従事していて、ジアチセルという化学物質により閉塞性細気管支炎という難病を発症したAさん。事業主である理研香料工業(株)の安全配慮義務違反を問う損害賠償裁判が始まり、その第一回の裁判期日が、11月29日に東京地方裁判所で行われました。

Aさんは現在、肺移植を待ちつつ、在宅療養しています。今回の第一回期日では、ご本人が車イスで入廷し、意見陳述を行いました。3人の裁判官は、Aさんの意見陳述にじっと聞き入っていました。

Aさんは、香料の製造作業の中で、様々な化学物質を混ぜ合わせる調合・攪拌作業、充填作業をしており、その際に、主要な原料の一つであったジアセチルにばく露しました。このジアセチルという化学物質は、20年程前から、重い肺疾患を引き起こす危険があるとの報告・警告が米国などで相次いで出されていました。しかし、会社は、安全対策が不十分なまま従業員に作業をさせていました。

会社は、食品香料・製造タンクの清掃作業(Aさんがジアセチルにばく露した作業の一つ)について、タンクの外に顔を出して息継ぎをすることが可能であったと主張するなど、今回の裁判で全面的に争う姿勢を示しています。

この裁判で、企業の安全配慮義務違反を認めさせ、労働現場での化学物質対策を徹底させなければ、今後も新たな被害者が生まれる危険があります。今回、16人の組合員が傍聴支援に駆け付け、意見陳述するAさんを支えました。今後さらに支援の輪を広げていきたいと思います。

第一回期日でのAさんの意見陳述の一部を紹介いたします。

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「私は、20代後半から30代前半という人生で一番楽しいであろう6年半以上の期間を、この病気と会社とのやり取りで無駄にしました。

友人達が職場で新たな役職に就いたり、資格を習得したり、結婚や出産、夢を叶えて自分のお店を持ったり、楽しそうに旅行やイベントに行ったり、おいしい物を食べたなどの投稿をSNSで見たり、電話で話を聞いたりするたびに、ふと、自分は何をやっているのだろうと惨めな気持ちになります。自分だけが社会から取り残されているようで、焦燥感が拭えません。」

「理研香料に勤めたたった3年で、私の人生は大きく狂ってしまいました。会社が製造室内の環境をしっかり整え、原料の危険性について社員にきちんと周知し、安全対策を取っていれば、このようなことはなかったはずです。

これまでの会社の対応は、香料製造に伴う危険性と製造に係わる社員の安全確保を軽視し、労災認定に至った事実を直視せず、真摯に向き合っていないと、強く憤りを感じています。会社が、私の人生を大きく狂わせたことをしっかり反省し、二度と同じような被害を生じさせる事が無いよう、裁判所には、会社の責任をしっかり追及していただきたいと思います。」

争議

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