「出入国管理及び難民認定法」の改悪案を、政府・与党が取り下げ‼
下町ユニオンニュース 2021年6月号より
「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の改悪案は、5月18日に、政府・与党が事実上取り下げる方針を決め、今国会での成立は無くなりました。
4月16日から、移住者と連帯する全国ネットワークなどが呼びかけて、入管法改悪に反対する緊急シットイン(座り込み)が、衆議院議員会館の前で行われました。衆議院法務委員会のある日は毎日、この座り込みが行われましたが、市民団体だけでなく、入管問題に関心を持つ多くの学生なども参加し、次第に参加者の人数も増えていきました。下町ユニオンの仲間たちも、また移住労働者を支援している他の労働組合の仲間も何人も参加していました。
国会の審議では、今年3月に名古屋出入国在留管理局で収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの事件が焦点となりました。ウィシュマさんは、数か月前から収容施設の中で体調を崩し、嘔吐や食欲不振、体重減少といった症状に苦しみ、仮放免や外部の医療機関での治療を求めましたが、名古屋入管はこれを拒否。ついに3月6日、監視カメラ付きの単独室で脈拍のない状態となり、救急搬送されましたが死亡したのです。野党は、入管が適切な医療・対応をしていなかったとして、真相究明を求めました。そして、入管のこの非人道的な実態を検証しないまま、入管の権限を強化する法案に賛成などできないと主張しました。
しかし、法務省は、「省内で調査中だ」とか「収容施設の保安のためだ」として、監視カメラの映像の公開など、ウィシュマさんの死に関する情報を明らかにすることを拒否しました。5月上旬にはウィシュマさんの遺族が来日し、映像の公開などを求めましたが、今も法務省は遺族の切実な願いを拒否し続けています。
法務省のあまりに酷い対応に対して、入管法改悪に反対し、彼女の死の真相を求めて作家や俳優が記者会見を行うなど、世論の怒りの声が広がりました。その結果、与党が法案を取り下げるという事態になったのです。
こうして改悪案は一時撤回となりましたが、法務省は次回以降の国会での再提出を諦めていないと報じられています。また、ウィシュマさんの死の真相は依然として政府によって隠されたままですし、彼女の命を奪った非人道的な入管体制と法律も残ったままです。
共に働く仲間、共に暮らす隣人である移住労働者の生活と権利のために、私たちは連帯して声を挙げ、法制度や社会の改革を求めていく必要があります。(A)