下町労働運動史8 【番外編・2】 カンボジアの「女工哀史」  

下町ユニオンニュース 2011年11月号より
下町労働史【番外編・2】  
 カンボジアの「女工哀史」
小畑 精武
●今風「女工哀史」カンボジア
 カンボジアはタイに比べると、ずいぶんとのどかで田舎です。そのぶん癒されました。主な工業は被服産業で被服産業以外はほとんど労働組合がありません。最賃も被服産業しかありません。最賃月額四五ドル(三六〇〇円)から六一ドル(四八八〇円)への引き上げが行われました。しかし「不十分」と昨年最賃引き上げストが頻発し数千人が解雇され、ほとんどは職場復帰しました。しかし活動家はもどれなかったそうです。
 訪問した縫製工場はプノンペンの郊外にある韓国資本の新工場。舗装された道路から工場までの約1キロの道はぬかるみ状態。工場はできたばかり、通勤にバスはなくトラックの荷台に数十人がすし詰めで運ばれます。
 若手の韓国人スタッフが約一〇人、パワーポイントを使って会社の説明をしてくれました。会社の理念としてCSR(企業の社会的役割)、企業理念として人権や環境をうたっています。工場には一三〇〇人のカンボジアの女性が流れ作業のラインで働いています。賃金は2時間残業込みで一〇〇ドル(ただし残業は強制ではない)、一八~二二歳が多く、産休は3ヵ月で五〇%の賃金補償があります。
ラインは布を扱っているせいか、ホンダほど工程管理は厳しくはありません。それでも「布地裁断→縫う→アイロンがけ→たたむ→袋詰め」の工程に話しかける余裕はありません。つくっているブランドの中にはアメリカの巨大スーパーWalmartやadidas、日本のUNICLOもあるそうです。
●ILOベターファクトリーの取組み
欧米のNGOは昨年行ったバングラデシュでも、今年のタイでも、労働者の権利確立・組織化に力を入れています。アメリカAFL-CIOも労働組合の組織率が低い地域にソリダリティーセンターを置いて組織化支援をしています。労働条件の下に向けた競争を制限するためには現地での労働組合が必要との判断です。しかし、日本資本から見ると邪魔者、外部からの圧力に映ります。
カンボジアではアメリカへの無税輸出を行うために、安ければよいというのではなく労働法を守った公正な貿易をするために、労働条件のチェック(モニタリング)をすることが一九九九年からすすめられてきました。今はILO(国連の国際労働機関)のベターファクトリー(よりよい工場)プログラムとしてすすめられています。政府、雇用主、バイヤー、労働組合の四者によって支援され、カンボジア労働法が守られているか、ILO基準が守られているかのチェック、職業訓練を一二人のILOスタッフがすすめています。雇用主の九〇%は中国人とのこと、文化の違いがあるなかで、理解をしてもらいながらプログラムを進める悩みを語っていました。
●アジア労働者との連帯を
タイ駐在のILO東南アジア担当スタッフはこうしたプログラムやNGOによる組織化支援の資金援助を評価しつつ、「主体が成長しなければならない。カンボジアには組合結成による解雇や暗殺があり、結社(団結)の自由が確立されていない」ことを強調していました。
日本の連合はJILAF(国際労働財団)を通じて支援をしていますが、欧米に比べて予算が少ないそうです。フィリピンではトヨタ工場での組織化にトヨタ資本は妨害しています。自主的なアジア「最底賃金」の運動も被服労働者を中心にすすめられていますが、日本での連帯活動は大変遅れていると反省して帰ってきました。みなさんもアジアの労働者との連帯を考えてみませんか? 
 ▼すし詰めでトラック通勤
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