「安ければいい」の? 公共サービスに従事する労働者の“最低賃金“

小 畑 精 武 (江戸川ユニオン)

Q これまで江戸川区には公契約条例はなかったのですか?
A 江戸川区は2010年に他区に先がけて公共調達基本条例を制定しました。その時は年々増える小中学校の建替えに適用される公正な入札・契約と区内雇用や地域活動への貢献という社会的要請にこたえようとするものでした。でも「安ければいい」という一般競争入札がもたらす公共工事・建設と民間委託労働者の賃金の下落をおさえる労働条項を組み込むことができませんでした。10年経過し安値入札が問題となってきました。すでに23区のなかで8区が最低報酬・賃金を決めています。

Q 労働者、市民にとって公契約条例はどういう意味、目的をもっていますか?
A 全国に先がけて2009年に制定された千葉県野田市公契約条例は「官製ワーキングプアをなくす」ことを目的とし公共調達にかかわる労働者の適正な労働環境を市の条例で定めました。発注者である自治体と受注者としての事業者との間で結ぶ『公契約に最低賃金』を設け一人親方にも適用される画期的なものです。

Q 公契約条例とはどういう仕組みの条例ですか? 
A 区の条例で区が発注する公共工事、業務委託、指定管理者にかかわる最低賃金・報酬を定め従事する労働者に適用します。受注者はその場合の最低賃金・報酬の支払い義務を下請け労働者に対しても負います。区はそのことを周知徹底する責務を負います。雇用安定についても江戸川ユニオンが出したパブリックコメント(区民の意見)に「労働環境等の確保により雇用の安定への配慮がなされたものでなければならない」と条例に入りました。

Q 適用範囲と対象は?
A 江戸川区の場合、公共工事建設については予定価格が1億8千万円以上、業務委託については同4000万円以上と他区より高い水準にあり適用範囲が狭くなる問題があります。
 適用対象労働者は、受注者(または関係者・下請)に雇用される労働者、同派遣労働者、一人親方などです。この対象となる労働者には未熟練労働者、年金受給者等も含みます。公共工事建設には国が定める公共工事設計労務単価が、業務委託、指定管理者には区の会計年度任用職員(いわゆる臨時非常勤)の給与が基準になります(時給1050円)。

Q 労働者代表の参加は?
A 公益・労働(工事建設関係、地域労働団体)・使用者の代表が参加します。

Q 実効性の担保は?
A 不払いなどの違反について労働者は申し出ができ、それによる解雇など不利益な取り扱いは禁止です。区は立ち入り調査が可能で、是正措置命令、違反者名公表、入札排除、契約解除により実効性を確保します。