地域に生きる難民申請者

下町ユニオンニュース 2021年2月号より
外国人支援ネットワークKAMEIDО カトリック東京国際センター(CTIC)
              大迫こずえ
 墨田区の小さな工場が立ち並ぶ地域で、かつて事務所として使われていたビルの一室や、古い家をシェアハウスとして、共同生活を送るウガンダ出身の人たちがいます。彼らは皆、祖国から日本に逃れて来た「難民申請者」です。ある人は難民認定申請の結果を何年も待っており、ある人は「難民とは認められない」という結果に、異議申し立てや、裁判を行っています。在留許可のある人もいれば、就労することも、健康保険に加入することもできない「仮放免」の人もいます。彼らに共通しているのは「祖国ウガンダに帰れない」ということです。
 彼らは4年前から、地域の神社とその周辺地域の清掃活動を行っています。毎月、一回、日曜日の朝、神社本殿と広い庭、そして周辺の道路を掃除します。高齢化が進む地域の広くて老木が生い茂る神社は、なかなか掃除が行き届かなくなっていたのです。参加可能なメンバーが集まり、黙々と掃除を行い、片づけ、それぞれの家に帰って行きます。梅雨の雨に濡れ、泥だらけになりながら、夏の暑い日には藪蚊に刺されながら、北風の吹く冬には寒さに震えながらも、毎月掃除を続けています。夏の草が生い茂る時期や秋の落ち葉の頃には、集めたゴミが45リットルの袋に50を越えることもあります。就労許可のある人たちにとって、重労働から解放される週の中のたった一日の大切な時間を、彼らはこのように使っているのです。
掃除を続ける理由を尋ねると、彼らは答えます。「住む場所がなかった私を受け入れてくれた人たちに感謝を表したい」「それぞれの国、それぞれの地域には、そこのために汗を流した先人がいる。私たちもここに住む限りは地域のために何かをしたい」
 彼らは心から日本に、そして自分たちが住む地域に受け入れられることを望んでいます。それは、「ビザを得て住民となる」ということだけではなく、その地域を作り上げる人間としての役割を果たす一員とりたいという望みです。
 自分たちの活動をアピールすることもなく、むしろ、美談として取り挙げられることを避けながら、誰が見ていても見ていなくても、時には誤解を受けることがあっても、彼らは黙って掃除を続けています。
 汗を流しながら一心不乱に掃除する彼らの姿を見ながら、彼らの願いが叶い、ささやかなこの活動がいつまでも続けられることを願わずにはいられません。
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