コロナ 各職場では

下町ユニオンニュース 2020年6月号より
A社(美容室)
 理髪業は緊急事態宣言が準備された当初、小池都知事より自粛要請対象業種と発表され、最終的には対象から外された。
 東京と千葉に店舗をもつ同社は、4月8日から14日まで、労働者には休業手当を支給して全8店舗を休業とした。
 その後、4月15日からは全店舗で営業を再開。出勤については、「安全を重視し休みを希望する者は休業手当を支給するので休業してもよい」との〝選択制〟がとられた。
休業にあたっての休業手当が問題であった。最初の全店舗休業の期間は平均賃金の60%、営業再開後に休業した労働者には65%と発表された。これに対して、分会から雇用調整助成金の申請と支給率の引き上げを求めた。その結果、全期間80%の支給というところまでは是正された。5月26日に団体交渉を行い、100%の支給を重ねて求めている。
通勤の問題もでた。昨年8月の分会結成から、原則公共交通機関とする会社に対して、個別にはマイカー通勤が認められてきたこともあって団体交渉を通して例外規定を設けさせて通勤方法を整備してきていた。その中で、今回、分会員の通勤経路となっている鉄道駅の利用者から感染者が出たこともあり、マイカー通勤の希望者への拡大を求め、実現した。
美容室は、お客さんとの距離をとることが困難だ。それでも会社は営業を継続するとの方針であり、自身や家族に持病をもつ組合員もいるため感染対策を強く求めた。
会社は、従業員だけでなくお客一人ひとりに「直近2週間以内の海外渡航歴の有無の確認」「37・5度を超える発熱症状の有無の確認」「家族に感染者あるいは自宅待機要請された方の有無の確認」を求めること、お客、従業員それぞれ用のマスクの配布や消毒といったことを実施してはいる。また、営業時間を一時間短縮したが、指示が不徹底で各店舗でバラバラの対応となっている。これらも団体交渉で是正を求めた。
B社(冠婚葬祭卸)
 分会員は全員が物流部門のため、業務は斎場への車での仏具などの配送だ。
 会社側の感染対策への危機感、緊張感はほとんどない状況に終始している。
まず、配達先での接客もあるためマスクの会社支給を求めた。これは、配達先の顧客(斎場)側から担当営業社員がつけずに訪問したことに「マスクぐらい付けてこい」とクレームが入る中で、はじめて支給されることになった。
 通勤についても、営業職では社用車での通勤を認めているケースもある中で、公共交通機関を避けるため配送用車での通勤を認めるよう分会から求め、実現した。
 配達先が斎場であり、ご遺体のそばを通ることもままある。配送先での商品や伝票の受け渡し、接客方法、会社内での感染対策など労働安全衛生としてコロナ感染対策の具合的な要求を4月20日に分会から提出した。これは会社側は「会社代理人から回答書を送る」として、現場ではろくに話を聞きもせず、ほとんど実施されていない。団体交渉で詰めていくことにしている。
 それから、賃金全額補償しての特別休暇を一週一日ほどシフトに組み込み休むようになった。あわせて残業をしないよう業務指示が出された。残業規制については、非常事態宣言が解除されても続ける方針だという。また、週休二日制にするとの話も出てきている。
昨年1月の分会結成通告時の要求に、月2回の土曜日出勤を1回に減らすことを盛り込んでいたが、会社は「できる体制にない」と回答していた。それが1回どころから週休二日制の導入があがってきていることは、誠実交渉という観点からもはっきりさせていく。
また、現在裁判準備中の一方的に廃止された「精勤手当」について過去に遡っての復活を求めているが、会社は「かわりに残業代をちゃんと払うようにしたから収入は増えたぐらいだろう」とうそぶいてきた。その残業をするなとされ、大きく賃金が減となっている。コロナに便乗した嫌がらせと分会ではみており、追及していく。
 
C社 (タクシー)
 都内のタクシー営業とは違い、無線での呼び出しと駅ターミナルでの待機が主となる営業形態だが、それでも利用者、営業収入が激減し、乗務員は歩合制の賃金体系のため大幅な賃金ダウンとなっている。出勤しても営業収入が上がらないため、年休をまとめてとる組合員も3月には出てきていた。
 非常事態宣言後、通常は月に12出番(1出番2日の隔日勤務体制)のところ、シフトを組んで各人4出番を休業とし、休業手当は「平均賃金の60%、あるいは出来高制の場合の計算での平均賃金の80%のいずれか高い方の金額」とした。
 平均賃金の算定の対象月にコロナで激減した3月が入っているため、そもそも低い金額がさらに低くなる。また、歩合制で元々最低保障がない賃金のため、対象期間の支給給与額が少なかったことから一日の休業手当が二千円にも満たないといった組合員もいる。
会社の責で休業させるにあたって、休業手当を労働基準法どおり最低限支給すれば良いということにはならない。
 休業手当であっても下限額を設け最低保障すること、平均賃金の計算の対象期間をコロナ減収のない月とすること、そもそも、かかる問題の根源は、従来から要求し続けている最低保障のない歩合制の賃金体系にあり、現行歩合制と最低保障のある賃金制の選択制にすること、これらを要求している。
 これは、団体交渉だけでは実現が難しいところであり、労働基準監督署への申告と、別課題での労働委員会への不当労働行為救済申立も視野に入れ、力を入れて会社に迫っていく。
 
また、5月22日から6月末まで、市が主体となる「タクシーフードデリバリー」という、タクシーによる飲食店からの商品配達サービスに協力することになった。
 これも、会社は組合に事前通知してきたものの、わずか一週間前の5月15日であり、他社内労組も入れた「労使会議」を
20日に開催するというもので、いつ、どこで、どのように協議、決定されたものかを明らかにさせつつ、組合軽視を許さず、当組合との事前協議を実効あるものとしていく。